――――夢を、見た。
瞳の住人 3
真っ暗闇の中でエドは目を覚ました。
暫く上を見つめてぼーっとしていたが、この暗闇が晴れないことに気付くとゆっくりと起き上がり、更に立ち上がって四方八方に視線を凝らすが、景色は変わらない。
どこだ、ここ。
そう言った筈の声も頭に響くだけで、声にはならない。
アル、アル。
弟の名を呼んでも返事はない。
と、代わりに小さな光が見えた。
エドは何かに導かれるようにその光の方へと歩き、どんどん大きくなる光の中を通り抜けると。
「この部分が曖昧だな」
「そこは書きようがねェんだよ。町の地形が…」
自分が青い服を着た男と話をしている。
口調からして二人は親しいのだろうか。
二人のやりとりはいつもの日常風景のように自然なもので。
エドは頭の中に流れてくるその様子を、目を閉じて見届けることにした。
「仕方ない、まぁいいとしよう」
「どーも」
何枚かある書類をトントンと整えると処理済の束の上に重ねた。
「ところでこの後はどうするんだ?」
「あぁ、その町でまた別の情報もらってさ。次はそこへ行こうと思う」
エドは疲れたように、近くのソファにどさっと腰を下ろす。
ふー、と一息付くエドを見ながら、男は机にひじを付いて顔の前で手を組みながら。
「場所は?」
「西方の方かな。明日にでも発とうと思ってる」
「また早いな…」
「俺は直ぐにでも行きたいんだけどさ、アルが少しくらいゆっくりしろって」
「私も弟君の意見に賛成だ」
「何だよ大佐まで…」
大佐と呼ばれたその男は、ははっと笑うと、椅子から立って今度はエドの隣に腰を下ろす。
「私としてはただ一緒に居たいだけなんだがね」
「…大体予想は付くけど?」
近づいてくる大佐の顔をエドは手で突っぱねながらしれっと言うが、大佐はそれに引く様子もなく。
「だったら言う手間が省ける」
手をエドの腰に回して拘束すると、また顔を近づける。
「って待て!」
「どうして」
「馬鹿かテメーは!こんな朝っぱらから、しかも仕事場で…!」
「いつものことじゃないか」
何を今更、と呆れたように呟く大佐に、エドは今度こそ明らめたようで。
「開き直んなっつーの…」
近づいてくる唇を大人しく受け止めることにした。
唇を離す度、次にされるキスは少しずつ深いものになっていく。
そしてその合間合間に。
「好きだよ」
「…っ、」
「愛してる」
「〜〜っ///」
どうしてこうも恥ずかしい台詞をさらっと言えるのか、不思議でしょうがない。
エドは何度言おうと思っても1度としてまともに言えたことがないというのに。
だからいつも恥ずかしさを紛らわすように、気持ちとは反対の台詞を言ってしまうのだ。
「っ、俺は、嫌いだっ」
「私は好きだ」
「〜〜世界で一番嫌いだっ!!///」
「…」
絶対また何か言い返してくると思ったのに、エドが目を伏せて言った台詞の後には何も返ってこなかった。
もしかして傷つけてしまったのではないかと、目を開けて焦り始めるが。
そろりと大佐を見上げると、嬉しそうな顔が目の前にあった。
「…何だよ」
こいつに限ってそれはないだろうとは思ってはいた。
だが傷つかないにしても何故こんなに嬉しそうなのだろうか。
「何が?」
「何でそんなに嬉しそうなんだっつーの」
俺嫌いっつったのに、とエドが少し申し訳なさそうに呟いたのに、大佐はあぁ、と笑って。
「だって なんだろう?」
「え」
あれ、声が―――?
「君が 、 から」
「!」
「君の 、 構わないよ」
だとか だとか、 は望まない。
ただ それだけでいい、と。
「〜〜〜〜っ恥ずかしい奴!!///」
「ありがとう」
「褒めてねェ!!///」
腕の中で暴れるエドをははは、と笑いながら抱きしめる。
「だが願わくば、 けどね」
「…結局はそうなるんじゃねーか」
「願わくば、と言っただろ。高望みはしない」
「あ、そ。じゃあ精々好いてもらえるよう頑張れば?」
エドは優位に立っているのが嬉しくて、にやりと笑って言うと、大佐は。
「あぁ、いずれ君が同じ台詞を言ってくれるよう頑張るよ」
と、ふわりと笑ってまた抱きしめた。
そこでまた暗闇が広がり、意識が遠退いていく。
最後の最後まで思考回路を引っ掻き回して考えたが、記憶が見当たらない。
誰、だったんだろう―――。
夢の中で親しく話していた人の名前が、どうしても思い出せなかった。
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04/05/31
抜けている部分をドラッグしても分かりませんので一応(笑)
ちゃんと後々繋がっているのでね、今言っちゃうとつまらんじゃないですか(爆)
重要なエピソードだったりするんでね、ここ。
ちなみにオフではココを漫画にして載せました。