「おはよう」
「おはようロード」
偶然からというか。
こんな風に朝の挨拶を交わすようになってから、数週間が経った。
ロードは清々しい笑顔で挨拶をくれる。
(…仲良くなったって思って、いいんだよな)
こんな風に語れる友達は貴重だ。
暇な授業の時は先生に気付かれない程度に、数学や化学についての会話に花を咲かせたりして、時間を潰したり出来るし、席が近くてよかったって思う。
けど、休み時間になって俺がアルのところへ行って、ふとロードの方に視線を投げると、その間は一人で本を読んでいる。
皆も俺と話してるのを見て結構明るい奴なんだって分かっても、ロードは俺以外の奴に対する態度を変えないからか、皆は話しかけないし、当然ロードが話しかける訳もない。
俺以外とは仲良くなる気がないのか、一人がいいのか。
どちらかと言えば後者なんだろうけど。
(…まぁ、分からないってわけじゃないしなぁ、俺も)
俺も前は、アル以外仲良くしたって詰まんねェって思ってた。
だってレベルが合わないんだよな。
勉強はある程度出来る方が良いと言っても、出来過ぎるのも問題だと、見に沁みて思った。
少しでも皆より学があると周りを下に見てしまうし、そう見てしまうと仲良くなりないって思っても今度は接し方が分からない。
皆が普通にやっていることが出来ないんだ。
頭が良くて、人望があって、いい奴で。
そんな奴漫画の中だけのことだって思ってたから、俺は一時友達なんて一人居れば十分だって思ってた時もある。
(けど)
誰かと話す喜びって、味わってみないとその有難味って分かんないんだよな。
俺はアルが居たから知ることが出来たけど、ロードにはそんな奴がいない。
だから俺が、そんな奴になってやりたいって思った。
皆と、ロードとの仲立ちに。
そう、思ってたんだけど。
「なぁ」
「何?」
「お前さ、皆と仲良くなりてェって思ったことねェの?」
「ないね」
「……」
これは、無理かもしれない。
そう思わせたのはあっさりと言われたこの一言。
「…少しくらい!」
「ない」
俺とロードの決定的な違いはここだ。
俺は少なからず、仲良くなりたいと思う気持ちがあったけど。
こいつには、それが全くないんだ。
しかも。
「俺はお前が居れば、それでいいから」
「……」
何か、笑顔で告白された。
益々、誰かと重なる。
態度とか口調とかだけでなく、顔も、更に言うことまで。
その時点で俺は仲立ちの誓いを放棄した。
(…ロイに似てるような奴に、そんな誓いは不要だよな…)
ロイにも、信頼出来る部下は居ても友人と呼べる奴は一人しか居ない。
確か、ヒューズとか言ったけど俺は会ったことないし…とかいう話は今は置いてといて。
ロイも言ったんだ。
―――君さえ居てくれれば、それでいいんだ。
と、まるで真似をしたような台詞を。
トラブルメーカー 2
時間は、朝から昼食時に時間を移し。
「告られた」
「誰に?」
「ロード」
「は?」
アルは頬張ったパンを飲み込んでぽかんと口を開けてる。
そりゃアルも驚くよな。
「告白って…」
「俺が居ればいいんだとよ」
離れているとはいえロードも同じ教室内に居るので、小さめの声で言う。
勿論、ロードは一人で昼飯を食べているが。
「それって…」
「何」
「何か、前のエドみたいだね」
「はぁ!?」
今度は俺が口を開ける。
アルとは違って、怪訝な顔をしてるけど。
「覚えてない?エドも前、似たようなこと言ってたじゃん」
僕に。
と、アルが笑顔で指をさす。
何処となく嬉しそうなのは何でだろう。
「…言ったっけ」
「言ったよー、僕そういうのは忘れない方だからね」
人は故意に覚えるということが出来るんだから、故意に忘れることも出来てもおかしくないと思うのに、どうしてそれは出来ないんだろう。
と、言ってやりたい。
はっきり言えば、忘れてくれってことで。
「『俺にはお前が居るから、別に…」
「っだー!言わなくていいっ!!」
「何を今更、言ったことなのに」
「昔言ったことだからだっ!あーもう恥ずい過去引っ張り出すなよぉ…」
俺は顔を隠すように机に突っ伏した。
そんな俺の頭をぽんぽんと軽く叩きながら。
「ま、僕が言いたいのは似た者通しってこと」
「そーかよ」
ぶすっとした顔を上げて言えば。
「あ、似た者同士っていえば」
「あ?」
「似てるよね」
フォレストと、あの人。
「あ、アルも思った?」
アルの言うあの人、とはロイのこと。
「うん、入学式の日見かけて思った。見た目似てるなって」
「見た目か…」
俺は目敏いアルと違って、あまり周りの奴を気にしない。
気にしないというか、喋る奴の顔しか覚えない。
だから中学の時も三年間同じクラスでも顔すら覚えなかったりして。
「俺は話してて、口調とか、態度とか…あと言ってることとかが臭わすんだよなー…」
「エドが言うんなら間違いないね」
そう、毎日嫌と言うほど相手をしている俺が言うんだから間違いない。
「けど何であんなに似てんだろうなぁ…」
「あの人には聞いてない?親戚とか…」
「機嫌が悪くなるから、友達の話はあんまりしない。親戚には俺は会わせてもらえない」
会わせてもらえないというのは会わせる価値がないという意味ではなく、価値が有り過ぎて会わせられないらしい。
以前一度、行きたいと言った時。
『社交の場に連れて行けば、お偉いさん方の中を凄い凄いと言ってたらい回しにされるんだぞ。それでも行きたいのか?』
と、真顔で返されて。
それには恐ろしいほどの真実味を感じて、それ以来行きたいとは口にしなくなった。
「だから俺、アイツの親以外で血縁に会ったことねェんだよな。一応血縁者に俺のことを話してはいるらしいけど」
「話は聞いたりしないの?」
「それはそれで、俺が他の男に興味持つと期限悪くなるから聞かないっつーか、聞かしてくんない」
頬杖を付いて呆れたように話せば、アルは苦労してるんだね、と哀れみの言葉を掛けてくれた。
他の奴ならムカつくところだが、アルなら許せる。
唯一俺の境遇を知っている親友だから。
「でもいい加減気になってしょうがないし、今夜辺り聞いてみるわ」
「そっか。でもあしらわれないようにね」
「は?」
「エドのことだから、そのままベッドに運ばれそう」
「な!」
言われなれていないエドは、真っ赤になって体を引く。
最近のアルは何だか、やけにこういう話に持って行きたがる。
笑顔に隠れて真意が読めないから、性質が悪い。
その辺、色々と突っ込んでやりたいけど。
「ん?」
「…いや、もういい…」
「そ?頑張ってね」
怖くて、聞けやしねェんだから。
と思いつつ、俺は息を吐いた。
HRが終わり、放課後。
各々が鞄を持って教室を出て行く中、ロードが帰ろうとする俺に声を掛けてきた。
「エド」
「ん?帰らねェの」
「なぁ、この本知ってるか?」
昼ネットで調べたんだけど、もう絶版らしくて、と続ける。
見せられた紙切れには、数冊の本のタイトルが書かれていた。
どれも俺がロイに強請って見つけてもらったものだ。
「ああ、俺あるぜ」
「本当か?」
そりゃ驚くよな、この本は俺たちが生まれる前に既に絶版になってるやつなんだから。
いや、その前にこの本を知ってることに驚いたのかもしれない。
何たって、全部英語で書かれてるんだから。
「前に、えーと、知り合いのコネ使って、ちょっとな」
敢えてロイの名は出さなかった。
もしロードと知り合いだった場合、何か大変なことになりそうだと直感でそう思って控えた。
「いいな、羨ましい限りだ」
「あ、家来るか?」
今日はロイの帰りは遅いし、何より俺はこの本について話せると思うと嬉しくて、つい誘ってしまった。
「ああ、エドがいいのなら」
ロードも嬉しそうだったし、俺はよっしゃ、と言って嬉しさが先走った気持ちに流されて先に教室を出た。
「…へぇ、俺の時は嫌だとか言ってたのにな…」
ロードは呟いた。
「…ま、アイツが入れ込むのも、分からないでもないけど」
眼鏡を取って。
「俺も、気に入った」
手に、入れたくなった。
と。
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05/05/27
ある程度ロードとロイの関係は読めるかと。
裏があるところは基本同じな方向で(爆)
ロイにも裏部分がかなりある筈なんですが…この辺りはいずれ…!
次で終わるかな。
ブラウザでお戻り下さい。