ああ、やっと来たね。


「遅すぎるよ君達」


横目で見た君の顔はとても。
懐かしかった。





il passato ed il futuro







雲雀がガンマに強力な一撃を放った後。
場に、少しの静寂が流れた。
綱吉もラルも、目の前で起こった一瞬の出来事に言葉を失ったのだ。

雲雀がひゅん、と音を立ててトンファーを下ろす。
視線は綱吉に向けられた。
綱吉もまた、この場に着いた時から視線は雲雀を捉えていた。

と、綱吉の横に居たラルが山本と獄寺に気付き、名を呼んで駆け寄って行った。
呼んだ名に反応し、綱吉も意識が二人の方へ向いた。
だが、駆け寄ることは出来なかった。
意識が再び、雲雀に向いたからだ。
否、向かせたのだ。
再び視線が交わされる。
雲雀が綱吉に、そうさせたのだ。


―――綱吉」


名を、呼ぶ。
綱吉はびくりと一瞬肩を揺らしたが、雲雀から視線は外れなかった。
尤も今の綱吉が雲雀から意識を、視線を外すことは出来ない。


「綱吉、」


雲雀が全身で、綱吉を欲しているのだから。


「おいで」


右手を差し伸べる。
誘われるように、綱吉の足が雲雀へと進められる。
そしてあと一歩。
そこで綱吉の足が止まってしまった。
傍から見れば会話をするには十分な距離。
だがその一歩がとても遠くに感じられて。
もどかしくて。
雲雀は綱吉の肩を抱いて、引き寄せた。


「ひば、り、さ」


胸に突っ伏す形になった綱吉の声は、服に吸収されて少し篭っていた。
だがそれは確かに。
紛れもなく、十年前の。


「…綱吉」


確かめるように、名を呼んだ。
身長、肩幅。
髪型、服装。
声。
全てが十年前の君、そのもの。

だが、同時に実感する。


「安心して。何もしないよ」


君は"君"じゃない。


――今の、君には」


君は今の綱吉じゃない。
今の僕の、綱吉じゃない。


(…早く、過去へ)


君はこれから、辛い道を歩かなければならない。


――早く、全てを終えて」


どんな道かは、言うことは出来ないけど。
君になら出来るだろう。
だから。


「早く、過去に帰って」


そうして早く。
過去の僕の元へ、行って。


「…けど、忘れないで」


今の僕も、過去の僕も。
全ては綱吉の為に在る。


「僕がずっと、君の為に在ることを」








―――だから、早く過去に帰って。
そして早く、"今の僕"の綱吉を、僕に返して。




僕は信じてなんかいない。


―――奴が射殺されるところは、多くの同志が目撃しているしな


誰かも分からない奴の、そんな言葉。




僕は信じている。


―――例え君が、僕の目の前で撃たれていたとしても。








ねぇ。
君は今、過去に居るんだろう。


帰っておいで。
早く。
はやく。


―――今の、僕のもとへ。








07/07/27
妄想に拍車がかかっております、すみません。
獄と山本、ごめんなさい(爆)
十年前のツナに願掛けする感じでお送りしました、ちょっと悲観的に見えるけど実はポジティブな十年後雲雀です。
十年後雲雀×ツナもいいけど、やっぱ幸せになるならお互い現在の相手がいいでしょう!ということで。
ちなみにタイトル、日本語訳は「過去と未来と」です(・∀・)

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