cloud smiles 〜 ep.4





黒か白か。
二つの色を持つ自分の、本当の色はどちらなのか。


(黒か)


その力を振るうことに躊躇いはなかった。
自らの力と引き換えに、相手を確実に仕留められるから。
仕留めた人の命の重みは、全て自分に返ってくる。
業を背負うことに、これ以上の力はないと、そう信じていた。
でも。


(白か)


力を差し出すだけが、戦いではない。
自らの力を信じることが、どれだけ怖く、辛いか。
この剣を、振るい続けてもいいのか。
何度も迷い、戸惑った。
しかし業を背負うことが全てではないと、聖騎士の力が教えてくれた。
背負う背中ではなく、自らは前を向かなければならないんだ。
そうやって初めて、自らの問いと答えを見出すことが出来る。
そう、信じ始めると。


(…黒…)


再び圧し掛かる、背中への重み。
聖騎士の光を帯びていても、背負ったものをお前は忘れるのかと主張し始める心の。
闇。


「…一度黒く染まったものが、白になることなんて出来ないんだよ」
「セシル?」


フリオニールとティーダが歩く後ろを続いていたセシルの呟きに、隣を歩いていたクラウドは気付き、名を呼んだ。
呼ばれて足を止め向き直り、咄嗟に聞いてしまいそうになった。


「クラウド、」


僕は、黒か白か。


「…ううん、なんでもない」


緩く首を振って、その問いを飲み込んだ。
こんなこと、聞けるわけがない。
答えられることが、怖い。
クラウドは何も発していないというのに、怯えた心が顔を俯かせる。
ああ、クラウドが不審に思ってしまう。
顔を上げないと。
でも、今の自分は一体どんな表情をしているのか。
分からないままクラウドに曝したくないと、ぎゅっと目を閉じる。
じゃあ、どうしたら。


「…綺麗だな」
「…え…」


俯いたままその声に目を開けると、クラウドのだろう手が自分の髪に触れていた。


「く、クラウド?」


その事実に驚き、思わず頭を上げればクラウドと面を合わせた。
クラウドの表情は柔らかく。


「綺麗だ」


微笑んで。


「黒も、白も…どちらも、セシルの色だ」


まるで心を読んだかのように、クラウドは。
欲しかった言葉を、くれた。


(…嬉しい)


満たされる。
柔らかいその微笑みの色に。


(綺麗だ)


微笑むクラウドの色の方が、ずっと。


「クラウドの方がずっと綺麗だよ」
「え」


クラウドの纏うもの全てが輝いていて、全てに惹かれる。
自分にはない、色。


「キレイだよ、クラウド」


右手を左頬に滑らせ、少しだけ触れれば、クラウドは少し目を細めて、僕を呼び。


「っセシル…?」


薄っすらと赤みが、頬に走ったことに気付いた。


(…お願い)


ずっとその輝きの色で、僕を満たして。
傍に居て。
微笑んでいて。











2009/08/05
セシルは紳士だと思うんだ。

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