cloud smiles 〜 ep.10
ギィン、と重い音が辺りに響く。
その音の感覚は段々と短くなっていき、少しずつ荒い声も混じり始めた。
「ぐっ!」
そして更に重く鈍い音が走り、呻く声と共に1本の剣が宙を舞い。
少し離れた所からザクッと地面に刺さる音が聞こえた。
「…くっそー、また負けたぁ〜」
その音と同時に、力の抜けた声を発したティーダは、両手を広げて後ろから地面に倒れこんだ。
「まだまだ甘い」
相手をしてくれていたクラウドはそう言って、己の大振りの剣を地面に突き刺した。
「追い詰めたと思ったのに」
「そこにつけ込み過ぎたのが敗因だな」
「う〜」
クラウドのアドバイスを噛み締め、ティーダは空を見た。
自分は剣士としての経験が浅い。
素早い動きや戦いのセンスみたいなものは、ブリッツで鍛えたもので何とかなってはいる。
それでも絶対的に足りないもの。
技術と経験。
技術はこうしてクラウドに手合わせして貰うことで、付け焼刃を本物には近づけて行っている気がする。
でも経験だけはどうしようもない。
もしかしたら、一番幼いオニオンナイトにすらも及ばないかもしれない。
(…元々、戦いたいわけじゃないけど)
それでも、強くなりたい。
この地で、皆の足を引っ張るわけにはいかないから。
そんな思いとは裏腹に、経験の浅さだけが浮き彫りになっていくのが辛かった。
「あー俺もクラウドみたいに強くなりたいっス…」
思わず漏れた言葉にクラウドが、は?と抜けた声を返す。
「っつかクラウドになりたい?」
そして上半身を起こしてそう続けると。
「…こんなうまく笑えない奴になったって楽しくないぞ」
冗談のこもったティーダに、クラウドも冗談を込めて苦笑するクラウド。
その笑い方は何処か皮肉めいて、少し悲しそうだった。
(何で、そんな風に言うんだろう)
ティーダはただ純粋に、そう思った。
「クラウド、笑えてるじゃないっスか」
オニオンナイトやティナに向ける顔は優しく笑ってる。
バッツやジタンと話してる時に、思わず笑いが漏れてる時もある。
フリオニールやセシル、スコールにも、時折ふっと見せていた。
ウォーリアには想像付かなかったけど、優しい顔してた。
勿論、自分にも何度も。
「笑うって言うより微笑むっつーの?俺、クラウドらしくてすげー好き!」
純粋にそう思ったから、素直に口にした。
言ってから、告白以外の何ものでもないと気付いた途端、恥ずかしくなって顔が赤くなった気がする。
でもそれ以上に。
「何、言ってるんだ」
クラウドの方が色が白いから、照れて赤くなっているのが良く分かった。
「ホントのことっス!」
念を押せば、耐え切れなくなったのか、口元を手の甲で隠してふいと視線を逸らしてしまった。
そんな行動の全部が可愛く見える。
自分より6歳も年上なのに、可愛いって言葉の方が似合うって言えば、きっとクラウドは怒るだろうけど。
その時のクラウドを考えるだけでまた可愛いって思える、嬉しい堂々巡り。
「…馬鹿」
自分を見て小さく言ったその表情には、淡い微笑みが混じっていた。
ああ、やっぱクラウドにならなくていい。
このキレイな微笑、俺はずっと見ていたいから。
(そうだ、決めた)
俺、クラウドを守る。
そのために強くなる。
そしたら俺、色んなものに押しつぶされそうになっても。
(死ぬ気で頑張れる!)
2009/08/16
ティーダははっきり告白するタイプなのかなと。
あとイメージは≒ザックス的な。
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