「っお前もか…!」


その声にぴちゃ、と先ほどよりいやらしい音を立てて唇を離す。
本日二度目の体勢に、これから何をされるのか分かっている分、多少の恐怖もあるだろう。
それでも凄んでみせるクラウドに、こちらの喜びは増すだけだ。
しかし。


「バッツと一緒にするな」
「一緒だろう!」


あんなふざけ半分でこんな行為に及ぼうとしたバッツなんかと一緒にされるのは気に食わない。
尤もバッツの真意など分からないし、分かりたくもないが。


「だったら拒めばいい」
「っ、」
「簡単だろう、お前なら」


嫌だと言ったところで、実力行使して貰わなければ自分はもう止まらないんだ。
それはおそらくクラウドも分かっている。
しかしクラウドの目は躊躇いに揺れ、視線を外す。
クラウド、と名を呼び返答を促せば。


「…怖いんだ」


拒むことが。
そう言うと、表情が悲しみに染まった。
拒むことが怖いから、拒めない。
一体どういうことなのか。


「何故…」
「……拒んだ手を、二度と…掴むことが出来なかった」


あの時。
差し伸べてくれた手を、素直に受け入れていられたら。
そしたらきっと。


「後悔なんて、しなかったのに…」
「…好きだったのか」
「……」


クラウドは肯定も否定もしなかった。
好きではなかったと言えば嘘になる、だが好きだという言葉で括れるほど簡単な感情じゃない。
そんな感情が伝わってくるようだった。


「…すまない、…忘れてくれ」


自嘲気味に吐くと、クラウドは右手の甲で目を覆った。


「…忘れられるか」


聞こえないほど小さい声で吐き、クラウドの左頬に手を滑らせると、目を覆っていた手が控えめに外され、スコールを呼ぶ。


「スコール…?」
「だったら、拒まないんだな」
「…?」
「俺がお前に、何しても」


それが引き金になり、スコールはクラウドの上着のジッパーを一気に下げた。
そこからはもう躊躇いも、勿論遠慮もなかった。


「な…っ!?」


触れたクラウドの肌は白く、細やかで心地良かった。
唇で触れれば柔らかく感じ、舌で触れれば心なしか甘い味がするような気がした。
下半身に纏うものもあっという間に取り去り、残るは両腕に掛かるニットと、脱がすタイミングを失ったエプロンのみだった。
これはこれで感情は昂るのを感じ、それ以上服には手を掛けなかった。


「…ちが、う、」
「何が」


上半身、下半身、腕、足問わず、自分の口が辿った跡を残していく。
白い肌には力強く吸わずとも簡単に跡が残るから助かる。
クラウドの息は段々と上がり、吐かれる言葉に甘みが増す。
時折高く上がる声は、気持ち良い証拠だ。
本当に、体が正直なのは助かる。


「違う、こういう意味じゃ、」
「俺はこういう意味に受け取った」
「馬鹿…!」


そんな口を利けるということはまだ自分の攻めが甘いのかと思い、クラウドの中心に手を掛けた。
それまで触れられることなく放置されていたが、今までの愛撫を確実に吸収していたのだろう。
つ、とスコールが指を少し滑らせただけで、クラウドの体ごとびくりと反応を示した。
小さいが急に与えられた刺激に、クラウドは息を飲み込み、首を仰け反らせた。
目前に広がる白く細い、美味しそうなそれに、スコールは味わうようにゆっくりと舌を這わせた。


「…っいや、だ、」


肌を飽くことなく滑ったその手は、クラウドの後ろに回る。
思いのほかするりと入った指は、スコールの思うように動かせる。
クラウドが放ったものを纏った指故に、濡れた音が止むことはない。


「いや、」
「クラウド」
「っ!や、め、…っ」


そして指は引き抜かれ、指の比にはならないものを感じたクラウドの瞳は、涙と恐怖に揺れた。
それでも。


「…拒まないでくれ」


多少強引に押し進めた自覚はある。
だが拒んで欲しくはなかった。


(お前のためにも)


優しい手がクラウドの頬を撫で。
舌が涙を掬った。


「…っ」
「受け入れてくれ…」


俺ならお前に、手を差し伸べたりしない。
お前の手を、掴み取る。
お前に過去、手を差し伸べた奴は何故それをしなかったんだ。


「スコー、ル」


…否、出来なかったのか。
奪うことが出来なかったのか。
…お前が、大切だったから。
お前の、自らは手を取らないという性格を知っていて、お前が自ら手を伸ばすのを待っていたのか。
…お前の本当の気持ちが欲しかったから。


(…バカな奴だ)


何が起こるか分からない世界に生きているのなら、待つなんて行為がどれだけの後悔を生むか知って。


(…知って、いたのか)


知っていたにも関わらず、待っていたのか。
それでも待ちたかった。


(何故…)


ふと、スコールの左頬に手が触れる。
クラウドの右手が、ゆっくりと頬を滑る。
涙を拭く仕草に初めて、泣いていたことを知った。


―――ああ)


全ては。


「スコール、」


クラウドに本当の温もりを、知ってもらうため。
自ら手を伸ばし、縋る喜びから生まれる。
温もりを。


「…与えてやるさ」


お前の中に居る絶対的存在の残していった、小さな温もり。
忘れることは出来ないだろう。
それでもいい、それでいい。
その小さな温もりに、俺は与えてやる。
お前が気付けなかった温もりを。
その温かさから生まれる、悦びを。


「だからもう、そんな顔、するな」


悲しく切ない顔で、受け入れなくていいんだ。


「ん…っ!」


初めて口付けた行為は、大きく上がるであろう声を抑えるという勿体ないことに終わったが、それによってクラウドの力が抜けて。
それはゆっくり、かつ互いがじっくりとその感覚を感じるように。
共有するように。
1つになるように。























目が覚めたという感覚に、スコールは眠っていたのだと気付いた。
テントの中には自分しか居ない。


「…クラウド」


テントを出ると、クラウドが星空を見て佇んでいる。
自分が脱がせた服は元通りになっていたが、首や腕にはしっかりと証は残っていた。


「…どうしてくれるんだ」
「何がだ」
「腕までこんなにされては、隠しようがない」


示された腕には、何ヶ所も鬱血した跡が残っている。
残した覚えはあったが、それにしてもこんなにつけた記憶はないことに驚いた。
無意識の所業に、流石に物が言えず、押し黙るしかない。


―――…一つ、聞いていいか」


沈黙を破ったのはクラウド。


「…どうして、抱いたんだ」


何を聞かれるのかと思えば。


「…そんなことか」
「な…、結構重要なこと、だろ」


呆れて言うと、尤もらしい理由をつけて反論するが、照れ混じりに言われては怒気も役に立たない。
それでも聞きたいらしいクラウドに。


「…分かってるんだろ、本当は」


男が男に抱かれる意味。
そして男が男を抱く意味。


「言葉にしないと駄目なのか」


逆に問えば、クラウドは俯いた。
その感情が分からないわけではない。
おそらく、不安。
過去の出来事が根底に残る限り、それは消えないだろう。


「俺は言葉にするのが得意じゃないんだが…」


だが今言える一言くらいなら、何とかなる。
その前に。


「俺も一つ聞いていいか」
「ああ、」
「俺じゃなくても、お前は抱かれていたか」


例えばバッツでも、同じように。
顔を上げたクラウドは目を見張ったあと、眉を寄せ明らかに機嫌を悪くし。


「…誰でも良い訳、ないだろ」


俺にだって、それなりに覚悟がいるんだ。
そう言った言葉が大層な割に、語尾は小さくしぼんでいった。


「だから?」
「…悟れよ」


言って欲しいことは何なのか、クラウドも分かっているのだろう。
それでもお前のように、自分だって欲しいときもある。
自分は特に羞恥らしい羞恥はないが、クラウドにはハードルが高いらしい。


「はっきり言わないと分からない」
「嘘つくな」


だったら尚更言わせたくなるが、クラウドは口を結んでしまった。
そんな愛らしい行動に、無意識のうちに口元が笑みを作っていることに気付かないほど、スコールは穏やかに今を感じていた。


お互い、言葉足らずでもどかしい。
でも心は同じだとそのもどかしさが語る。
心地良い。
それはきっと、クラウドも。











―――…まだ、朝まで時間はある。…眠ろう」


穏やかさを取り戻したクラウドは、スコールを誘うとテントへ戻ろうと踵を返す。


「クラウド」


それを呼び止めて、肩越しに振り向いたところをスコールは頭引き寄せ、肩に押し付けた。


「スコール?」


俺は言葉にするのが得意じゃない。
だから今、この感情を表す言葉は1つしか分からない。


―――愛してる


その陳腐な言葉。
たった1つだけ。














2009/08/07
ホントは前半までで1つの話として上げるつもりだったんですが、8/7用に後半を追加。
見事な温度差\(^o^)/
しかし最後の台詞、個人的に87には縁のない台詞だと思うんですが(むしろ縁のない方が好き)
一度くらいなら…って言わせてみたら、案の定陳腐…切腹。
それがタイトル(爆)
でも87だと陳腐だけど、ZCだと凄く綺麗な言葉ですな。話反れた。
ちなみにバッツは、あれが自分のベストポジションwおいしすぎる立ち位置…w
ところでタイトルセンスって何処で買えますか?(切実)

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