・クラウドは全てを思い出してるけど、無印仕様。
・ストーリーはナンバー順に進んでいる感じで、7は終わり8の最中的な。
こればかりは盛り込めなかった前提を踏まえて…



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目指す先は当てもない。
だが各々が手に入れなければならない物がある限り、歩き続けなければならない。

その先導をするのがティーダとバッツ、ジタン。
3人の会話は絶えることなく、常に誰かが声を発し、そこに笑う声が被さっている。
クラウドはその3人の後ろを、一歩引いて歩いていた。
勿論会話に入れないわけではなく、入らないだけだ。
笑いの混じる会話が苦手だということを、3人も知っているから、無理に話し掛けては来ない。
それでもクラウドが気になる3人は時折、声を掛けるわけでもないが振り返る。
その時もそんな理由なき理由で振り返ったバッツだったが。


「あれ?スコールは?」
「あ。ホントだ。居ないっスね」


クラウドの横を歩いていた筈のスコールが居ないことに気付き、その声を聞いたティーダとジタンも振り返り、全員が足を止めた。


「クラウドー、横歩いてたんだろ?気付かなかったのか?」
「……ああ」
「普通、気付くと思うけど」


呆れたジタンに問われて思い返してみるが、視界に入っていた人物がいつ消えたのか、本当に覚えていない。
意識していなかったからというのが尤もな理由だが、戦士としてはあまりに抜けた理由で、軽く自己嫌悪に陥りそうだ。
しかし意識してスコールの存在を追っているのもどうかと思う。
多大に興味があるわけでもないが、特にどうでもいいというわけではない。
そう、1人の仲間として意識しているだけだったのだが。


「…そうだよな」


気付かないのはやはりおかしい。
スコールを見失ったのは自分の責任だと、クラウドの思考がそこに向き始めたのを見計ったかのように。


「じゃーヨロシク、クラウド」


スコール探してきてくれ。
バッツが頭の後ろで手を組み、笑顔でそんなことを言う。


「は?」


思わず抜けた声を返し、何故自分なのかと問えば、一番スコールの気を損ねなさそうだしと3人の一致だった。
せめて誰か1人一緒に来てくれてもいいんじゃないかと思ったが、既に物言える雰囲気ではなかった。
とりあえず来た道も行く道も暫くは一本道だ、合流出来ないことはないだろう。
もし分かれ道に差し掛かったときは、そこで合流しようということに決め、クラウドは3人と別れ来た道を戻り始めた。
何かあっても、バッツがクリスタルを持っている。
クリスタル同士共鳴し合うものだということに最近まで気付かなかったが、今はこれが導になると思えば、分かれて行動することに不安はなかった。
そこでふと自嘲染みた息を吐いたことに気付いた。
誰かと離れて不安という言葉が出てくるなど、この間まで縁がなかったことだと思うと、少し可笑しくなった。
同時に、”奴”に。


(俺はお前の、" "なんかじゃ、ない)


こんな感情、お前にはないだろうと。
そう、言ってやりたいとすら思えた時。


―――スコール」


見知った後姿を見付け、クラウドはそこでその思考を止めた。
足早に近付き再度名を呼ぶが、返事も振り返ることもなく、スコールの足も止まらない。


「おい、スコール」


その態度におかしいと感じ、クラウドがスコールの左腕を掴み、制すると漸く歩みを止めた。


「何処へ行こうとしてるんだ」
「…関係ない」


そう吐くと同時に、クラウドの腕を振り払った。
普通ならば軽く嫌悪を覚える行動だが、今は再度掴みたい衝動に駆られた。
それくらい、スコールが不安定なんだと感じられたからだ。
だがこんな状態でそれを告げたところで煽るだけだと、自分に置き換えれば分かることだ。
だからいつもと変わらぬ態度と声で、気付かぬ振りをして。


「バッツたちが呼んでいる」


だから行こう、と続けようとした。
声を遮って。


「関係ないと言っている」


低い声が耳についた。
明らかに苛立っていると、クラウドだけでなく、口にしたスコールも分かっているのだろう。
しかし一度露になり始めた苛立ちを抑制するのは難しい。


「…あんたは、楽だな」
「…?」
「戦う理由がなくてもいい」


何だ急に、と怪訝な顔を向けるが。


「何を…」
「……"人形"、か」
「…!」


何故、それを。
目を見張ったが、原因が分からないクラウドにスコールの言葉を止める術はない。


「いいな。導いてくれるんだろう。羨ましい」
「…っ!」


一瞬で頭に血が上った自分に、言葉で止める術はないから。


「っお前に…!」


スコールの襟を掴み、その勢いのまま地に叩きつけ。
体を跨ぎ、地に押し付けるように体重を掛けると、スコールの顔が苦しげに歪んだ。


「お前に何が分かる…!"奴"に全て奪われ、"奴"の意識から逃れられない俺の、何が…!」


それを楽だと、羨ましいと。
何が楽だというのか、何を羨むというのか。
その器であったが故に大切な人たちを見殺しにした、自分の。
それを忘れて、奴の言う"人形"として生きた自分の何を。
そう、全てをぶちまけてしまいたかった。


…エアリス。
―――ザックス。


「っああ、分からないな…っ!」
「っ!?」


圧されている故に少し掠れた声で吐きながら、スコールは上半身を起こし、クラウドの首を掴んだ。
スコールの大きな手は、細い首を楽に掴めてしまい、構えた衝撃以上に気管を圧迫されるのを感じた。


「あんたにだって分からないだろう!何の為に戦っているのかすら分からない、俺の不安が!」
「…!」


―――そうか。
お前のその不安定は。


「どんな理由であれ、戦う理由があれば強くなれる!だったら戦う理由のない俺は、何のために強くなれというんだ!」


誰が敵で誰が味方なんだ。
誰を信じればいいんだ。
何の為に俺は剣を振るえばいいんだ。
何の為に、戦えば。


「…っスコー、ル、」


お前のその不安定は。
俺にも、同じように生まれた。
不安の一つなのか。


「スコール、」
「っ」


漸くはっきりと呼べた名前と、頬に滑らせた手。
それに意識を感じたのか、ハッと我に返って目を見開き、スコールは喉から手を離した。
ひゅう、と急激に空気の通りを戻した喉は、一気に受け付けてはくれず、クラウドは身を丸めて咳き込んだ。
全体重をスコールの膝に預ける形になったが、お互いそこまで気に掛ける余裕はなかった。


「…悪い……」
「いや、俺の方が先に、食って、掛かった」
「俺が先にけし掛けたんだ……言い過ぎた…、」


先程の覇気は欠片もなく、罰が悪そうに視線を落としたスコールの肩口に。


「…、」
「っ、クラ、」


漸く咳が落ち着いたクラウドが頭を預けると、びくりと肩が震えるのを感じた。
身体が強張っているぞと笑ってやろうかとも思ったが、落ち着いた空気を壊したくはなかった。
変わりに、別の想いを紡ぐ。


――…俺達は皆、戦う理由が違うと、分かっていたのにな…」


だから、求めてはいけないのだ。
此処に自分の戦う理由を理解してくれる人を、求めては。
此処に集った者は皆、違う理由があるのだから。
個を押し付けてはいけない、個を主張してはいけない。
個は個でしか、それを理解することが出来ない故に、対立を生んでしまうのだ。
目的は違えど、同じ志を賭す者としての、最低限の志。


「…それでも吐き出さずにいられないのは、人間としての性、か…」


スコールの言葉に、クラウドは目を開いた。
"人形"だと言った、さっきの言葉をスコールなりに訂正し、詫びたかったのだろう。
だがはっきり言われればこちらも再度言葉を返さなくてはならない。
だから独り言のように呟かれた、その心遣いが嬉しかった。
4つも年下だが、一段と大人びた行動や言動を取る、その背伸びが自分には、羨ましくも。
愛しくも思えて。


「…何故、頭を撫でる」


微笑えた。


「子供じゃあるまいし…」
「俺からすれば、十分子供だ」


後頭部を撫でる手は止めず、スコールもまたそれを制することはしなかった。
あのスコールが感受してくれている。
皆がこの様子を見たら驚くだろうなと考えると、また微笑えてきたが。


「たかが4年、」


その言葉に、消された。


「…大きいよ」


あの4年は。
長かった。


「…眠り続けるには、長過ぎる時間だった…」
「眠り…?」
「いや…忘れてくれ」


自分を作り変え、形成し。
真実を、奥深くに仕舞いこむには。


「…平気か」


怖いさ。


「…今のお前が、気遣うのか」
「悪いか」


奴が、セフィロスが在る限り、呪縛からは逃れられないのだから。


「いや…」


だが、平気だと今は思える。
人より自分のことを考えろと、言ってやりたくなるくらいには。
そう、微笑えるくらいには。


「ありがとう」


大丈夫。
もう、忘れない。
俺自身が二人の。
生きた証。

















「…平気なら、そろそろ、退いてくれないか」


その声に肩口から頭を上げると、少し紅くなったスコールの顔に気付いた。


「何故、照れる必要があるんだ」


真顔で、間近から顔を覗けば、スコールはあからさまに顔を逸らし。


「…それを聞くのか」


この状況で。
そう言われて、今の状況をやっと理解する。
クラウドが跨いでスコールの膝の上に乗っているというこの状況が、スコールにとって照れる要因ということだ。
しかしこの格好はそんなに恥ずかしいだろうか。
確かにどちらかと言えば、乗っている自分の方が照れるべきなんだろうが。


「生憎、こっちにはそれなりの耐性があるんだ」


伊達に過去何度も大型犬に押し倒されていない。
あいつの相手をしていれば、嫌でも慣れてしまうんだ。


「…?」


クラウドはフ、と妖艶に微笑い。
スコールの頬にすっと手を滑らせ。


「珍しい顔だな。もっと見たい」
「っ!」


どっちが子供だ!と叫びたくなったスコールだったが、初めて見たクラウドの顔に、思考がついて行かなかった。


自分が何に悩み、クラウドに突っ掛かったのかすらも、今は考えられなかった。
これで、いいのだろうか。


(ああ、アンタの掌が心地良い)


これで、いいのか。
心は、何故か晴れやかだから。














曇り空雨模様、心は晴れ











2009/05/22
テーマは87でも78でも取れるような雰囲気と、クラウドの誘惑←
8知らない上に異説設定もくっつけ、かつクラウドの過去出してきたらもう訳分かんなくなった…切腹。
何かACCとか混ぜちゃった気もしなくもなく…(爆)
どっちかというと78スキーなトイレさんに捧げた話ですた><