Desire







「あー生き返ったぁー!」


ハーフパンツだけを履き、綺麗に作り上げられた上半身を惜しげもなく曝し。
満足した声を発しながら、ティーダが浴室の扉を開けた。
首から下げたタオルでガシガシと頭を拭きながら、短い廊下を歩きベッドへと向かう。


「クラウドー、風呂空い…」


角から開けた室内に首を覗かせて声を掛ければ、壁側のベッドで横になっているクラウドが居た。
ティーダの比較的大きな声にも反応しないということは。


「クラウド、寝てんの?」


近付き、ベッドのスプリングが軋まない程度に体重を掛け、壁に向いている顔を覗き込めば、クラウドの美しさを強調している青く大きな瞳は閉じられていた。


「なあ、風呂…」


控えめに耳元で主張してみるが、返って来るのは静かな寝息だけだった。
普段のクラウドならば、ベッドに体重を掛けただけ、いや声には反応せずとも近付いた気配を感じて起きるだろう。
余程疲れているからか、それとも。


(安心、してくれてんのかな…)


そうだったらいいな、と考えただけで頬が緩む。
いや期待しちゃいけないと言い聞かせ、誰にも見られていないと分かっていても、何とない後ろめたさから口元を押さえながら体を退こうとした時。


「…ん、」


クラウドの身動ぎが、思わずティーダの動きを止めた。
起こしたかも、と逸らしていた顔をクラウドに戻せば。


「っ、」


体を仰向けにした所為で、大きく開けられたニットから首筋、鎖骨、そしてちょっと角度を変えれば胸元まで見えてしまいそうな。
そんな事実を目前に付き付けられて、息を飲まない男なんていない。


(ヤバイ、んじゃねえ?これ…)


目を逸らそうにも逸らせない程の威力がこれにはあるらしい。
それどころか、体全体を引き寄せるような間隔に陥りそうになる。


(何で、これで女じゃないんだろう…)


思わず込み上げる疑問で何とか思い留まろうとするが。


(女だったら…)


思考が既にクラウドに侵されていて。


(いやクラウドだったら、女じゃ…)


なくても、イイ。

決め手がティーダを後押しし、体を完全にベッドに上げて、クラウドを組み敷くように跨いだ。
スプリングが大きく軋むが、クラウドが起きる気配はない。
顔の両脇に置いた伸ばした腕を、ゆっくりと曲げて、顔を近付ける。
肘を付けば、クラウドとの距離は数センチにまで縮まった。
おそらく、此処が最後の砦。
此処を越えたら後戻りは出来ない。


(どうする、なんて)


きっとクラウドが眠っていると気付いた時から決まってた。
そう思ったら、砦なんて最初からないようなものだと、唇を寄せることに躊躇いはなくなった。


「…、」


頬に軽く唇を落としただけなのに、肌の綺麗さが鮮明に伝わる。
これで自分より6つも上だなんて、ますます信じられなくなった。
でも事実なんだったらそれでもいい、これもクラウドを構成するものだと思えば、それすらもただ煽る要素になるだけだ。
実際煽られて、勝手に鼻や瞼、額に唇が走っていく。


「…っ…」
(…あ…)


流石に起きるかと、身動ぎ始めたクラウドを冷静に見た自分が居たが、頭の中はもう沸騰しそうだった。
それを表すように。


――…っ!?」


起きる前にとクラウドの唇を塞いだのと、クラウドが目を覚ますのは、ほぼ同時。


「ん、ぅっ」


思わずクラウドが口を開けてくれたおかげで、容易に舌を滑り込ませることが出来た。
口を頑なに閉じられたら、深いキスなんて出来ない。
そんな偶然に感謝しながら、ティーダはクラウドの舌に自分のを絡めた。


「っ、ん、っ」


生理的に生まれる唾液が混ざり合って、クラウドの口の端から溢れ出す。
それでも口の奥にあるものは吐き出せないから、飲み込むしかない。
ごくん、と無意識にクラウドが飲み込む感覚が、舌から伝わってきて。


「んん、っ!」


余計、煽られて。
もっと深くと、横に着いているだけだった手をクラウドの首に回して、深く繋がり易い状態を作った。
そして互いに殆ど隙間のない状態が暫く続いて。


(…う、流石に苦しい、かも…)


鼻で上手く息が出来なくて、息苦しくなっていくのが分かる。
ブリッツで鍛えられた肺活量も、そろそろ限界らしい。
クラウドも最初は抵抗して体を押し返していたものの、体格差と体勢で全てが無駄に終わり。
気付けばティーダとのキスによって奪われた体力と肺活量はとうに限界を超えていた。
互いに酸欠で、頭がくらくらしている。


(でも…)


空気を吸うよりも。
酸素を欲しがるよりも。


(クラウドとのキスを、止めたくない)


離れたくない。
苦しいけど、気持ちイイ。


(もっと、)


もっとクラウドと、先へ―――











―――っ、ごめん…、クラウド、」


漸く解放すると、互いの荒い息が交じり合う。
どうして、何故。
疑問ばかりがクラウドの頭に上がったが、それよりも先に謝られて口には出せず。


「謝る、くらい、なら…」


やるな。
そう続けるより先に。


「違う、」
「…?」
「ちょっとさ、マジで」


ああ俺、今。


「抱きたい――


欲情してる。











2009/10/29
続きを書く勇気がない\(^o^)/
107はこのくらいが個人的には面白いんだがどうなんだ!(爆)
ということでクラウドにがっつくティーダを書きたかっただけのお話←

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