What is this ?







岩が連なる地。
この岩山を歩き通しだったコスモス陣営は、広い作りの洞窟を見付け、疲れを癒していた。
暫くの休憩の後に発とうとウォーリアが発案したが、ティナやオニオンナイトの体力差を考え、今日は此処で夜を越した方がいいとセシルが提案し、尤もだとウォーリアを含め皆が賛同し、洞窟内で暖をとり始めた。
勿論体を休める者が多数だが。


「暇だなー」
「暇だよな」
「暇っス」


バッツ、ジタン、ティーダの三人は洞窟の上に仰向けに寝転がっていた。
いつもならば移動と戦闘で、三人の体力も限界に来ているところだが、最近はイミテーションの出現率が少ない所為か、逆に体力が有り余っている感が否めない。
逆にストレスが溜まると言い張って、こちらからイミテーションを狩りに行こうとしたバッツは、他の仲間に迷惑と面倒を掛けないためにも余計な戦闘は避けろと一掃されてしまったのが、つい先ほどのこと。


「俺らに動くなって拷問だぜ」


ジタンが溜め息交じりに吐けば。


「いや考えてみろジタン。別に動くなとは言われていない」
「そういえばそうだな」


悪い方に機転を利かせたバッツが起き上がれば、それにつられてジタンもバネを効かせて起き上がり、目を輝かせた。


「っつーことで!とりあえずあそこまで勝負だ!」


バッツの指差す先には聖域が見えるが、軽く数キロはある距離だ。
だが適度に体を動かすには適度な距離で、例えイミテーションが現れようとも、三人で行動していれば危機に陥ることはないだろうという、一応の理由を念のため考え。


「望むところだ!」


バッツと共に、話に乗ったジタンが勢い良く岩を飛び降りて走り出す。


「あっ!ずるいっス!!」


遅れを取ったティーダも、急いで追い付こうと、バッツとジタン以上に勢い良く飛び降りようと、岩を蹴って。
洞窟入り口に足を着き、そこから更に勢い付けて走り出そうというビジョンが、ティーダには見えていたのだが。


「っクラウド!」
「?」


足を着く筈の位置に、洞窟内からクラウドが出てきてしまい。


「あぶなっ!」
「っ!」


ティーダがクラウドの名を呼び危険を叫んだ時には、既に互いの体の距離は近く、避けるに避けれない状態故に。


「……っ痛〜」
「…っ…」


必然と、ぶつかる以外の道はなかった。
しかしティーダが腕を突っぱねることで、クラウドを勢いのまま潰す事態だけは何とか避けることが出来た。
勢いを殺すために腕と膝に全体重を掛けたため、痛みが量産されている最中で、耐えるためにも暫く目が開けられなかった。
クラウドは後ろに倒れるしかなく、体は何とか上手く受け身を取ったものの頭までは気が届かず、岩に強かにぶつける形になり、ティーダと同じく痛みに耐えるように目を閉じている。


「〜〜ごめん、クラウド…」
「今度から気をつけてくれ…」
「うん…、」


互いに何とか痛みをやり過ごし、ティーダの声をきっかけにほぼ同時に目を開けると、視線が絡み合った。
ティーダの目の前には、人形のように整った顔が在る。


(うわ…すげーキレイな顔…)


クラウドの顔をこんなに近い距離で見るのは初めてだった。
皆クラウドは綺麗だって言ってることは知ってるし、勿論自分もそう思ってる。
でもこんな近くで見たことはなくて。
こんな、もう少しで口がくっつきそうな距離で見ると、綺麗なんて言葉で収まんないくらい。
なんというか、目、髪、クラウドを構成する全部に惹かれて。
逃げられないような感覚に襲われて。


(…あれ?何でこんなどきどきすんの…?)


顔に、胸に。
熱が集中してく。


「…ティーダ?」


少し上目遣いに、小首を傾げる仕草で、名前を呼ばれて。


「っ!!」


(平気なわけ、ない!!)


がばっと退き、ティーダはクラウドを振り返りもせず。


「〜〜っごめん!!」


とだけ叫び、全力で走り去った。


「…?」


残されたクラウドは起き上がり、ティーダが走り去った道を示すような砂埃を、疑問符を浮かべたまま追っていると、洞窟内からセシルが顔を出した。


「何かティーダの謝る声が聞こえたんだけど…どうかした?」
「…さあ」


何もなかったわけではないが、きちんと謝ってもらったクラウドとしては、走り去られる理由が分からず、答えることはできなかった。











その日以降。
ティーダはクラウドを過剰に意識してしまうようになってしまった。
クラウドばかり見て、クラウドが振り返るとバッと顔を逸らしてしまう。
その繰り返しはあからさまなもので、当の本人たち以外はとうに気付いているが、互いに本人が気付かない故に言うに言えない状況だ。
しかしティーダが何故そんな行動を取るのかは誰も知らず、今日もただ、ティーダの不審さに呆れるだけだ。
当のティーダはといえば。


(あれで6つも年上とか反則!すげー強いのに、細くて…俺よりちょっと小さいし…)


顔を少し赤く染めつつ、ちらちらとクラウドを気に掛け。


(…そういえばあの時、もうちょっとで口、くっつきそうだった……)


クラウドがふとティーダの方に視線を走らせれば、あからさまに首を回して、視線を回避して。


(って!!何意識してんだ俺!!おかしーだろっ!)


頭を両手でガシガシと掻きむしり。


(クラウド男だし!女じゃないしっ!男に!こんな!!)


頭を抱えて、考える。


(クラウドだってきっと幻滅する!こんな、この、)


―――この、気持ちは何?


(これは、クラウドを避けてるから?)


避けるのを辞めれば分かる?


(クラウドに触れれば、分かる―――?)











「っクラウド!」


ティーダは皆の前でも迷わずクラウドを呼んだ。


「?」
「あの、その、〜〜」
「ティーダ?」


いざ目の前にして、今考えていることを上手く口に出来る筈もない。
だが言わなければ。
触れなければ。
しかし思考回路はショート一歩手前で、思わず口から出た言葉。


「だ、抱かせて!」
「は」


それに呆気に取られるクラウドに変わり、周りの面々が声を上げる。


「ティーダ!?」
「ずるいぞ!俺だって抱きたいのに!」
「どさくさに紛れんなよバッツ!」


フリオニールの裏返った大きな声に、バッツの聞き逃せない言葉に突っ込むジタン。


「大胆…」
「ティナ…?」
「ティナも爆弾発言だね」


ほんの少し染めた頬を両手で包み呟くティナの言葉に、嘘だよね?という顔をして名前を呼ぶオニオンナイト。
しかしセシルは動じない。


「な、何言っ…」


ティーダは赤くなったクラウドの手を引いて、言い終わる前に抱き締めた。
その様子を見て。


「…何だ、そっちか」
「焦って損した」
「お前ら…」


ため息と安堵混じりに吐くバッツに、さり気なく本音を言うジタン。
フリオニールは呆れるしかない。


「つまらない…」
「ティナ…!」


残念、と呟くティナは、思わず詰め寄ってしまいそうになっているオニオンナイトに気付くことはなかった。


「スコール」


その輪から外れて、真顔でガンブレードに手をかけるスコールを見つけたウォーリアは。


「気持ちは分からなくもないが、堪えろ」


惨事だけは回避しようと、クラウドに対しての感情故に一番性質の悪い人物の宥めに徹していた。


「でも、どうしてこうなったんだろうね」


そんなセシルの疑問は聞こえてなどいないが。





(あああ分かんねぇ!!)


焦って答えを出そうとするように、ティーダは更に腕に力を込めた。


「っ、ティーダ?」


これは、何?
この溢れる気持ちは、何?











2009/10/07
107はこういうところから始まる気がする!
という妄想で10/7記念に^^^^
ウチは皆クラウドが大好きなので、こういうノリの時はこれがデフォルト^^^^
とりあえずティナごめん!←
10/7おめでとー!!w

…始まりは純情そうだけど、一度始まったら凄い気がするんだティーダは(何の主張)


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