イーストシティに着いたのはつい数十分前。
「え?大佐いねーの?」
数ヶ月ぶりに訪れた大佐執務室はもぬけのから。
部屋を出て近くを偶然通りかかった中尉に聞けば、数十分前から姿が見えないらしく、今探していたとのこと。
司令部内を殆ど探したが、どこにもいないようだ。
別に特別用事があるわけじゃねーけど。
そう思いながらも俺は大佐を探しに外へ出た。
だって、さ―――?
月飼い
「ったく、何処ほっつき歩いてんだか…」
とりあえず司令部を出たはいいが、セントラルではないとはいえ此処だって立派な都会だ。
俺たちの故郷でかくれんぼするのとはワケが違う。
大佐の行きそうな所を探してみるかと考えてみる。
真っ先に浮かんできたのは酒場。
だがこんな真昼間から流石の大佐も行くわけがないことくらい知ってる。
しかし何故タイミング良く居なくなるのかがどうも引っかかる。
俺たちが着いたのは数十分前で大佐が居なくなったのも数十分前。
となると何かあって俺から逃げていると考えるのが自然だ。
が、何故逃げる。
「ぜってー捕まえてやる…」
理不尽とも言えなくもない湧き上がる怒りに、エドは不敵に笑って駆け出した。
ほぼ同時刻。
「一体何処を歩いているのか…」
そんなことを何度も呟くロイは、すぐに軍人とは分からぬよう私服に着替えて街中を歩いていた。
顔は色んな意味で周りにばれる要素であったが、帽子はかぶりたくないという勝手な理由でかぶらず、ばれたらその時だと思いながら歩いているが、誰かが声をかけてくるような素振りなど一切ない。
声をかけて欲しいと言ったら変になるが、それでもこんないい男が一人で歩いているのだから一人くらい声をかけてくれてもいいじゃないか、と矛盾したことを考えていたりするが。
それにしても追っ手が来ないのが不思議である。
まあきっといつものことだと諦めているのだろう。
そして戻ったら物凄い量の書類が待っていることくらいも想像できる。
とにかく今私は後の恐怖よりも今の幸せを選ぶのだ。
「だが既に駅にも居なかったとなるとなぁ…」
勿論今探しているのは鋼の錬金術師。
先程駅に行ってみたが、既に列車は到着していて乗客も殆ど残っておらず、すれ違いになったようだ。
司令部に戻っても良かったのだが、もし私が司令部に居ないと気付くと何処かへ行ってしまうのは目に見えている。
それこそまたすれ違いだ。
しかし最良だと思って行動したことが結局すれ違いを生むなんて。
やはり戦略と恋愛は違うらしい。
「…図書館にでも行ってみるか…」
相変わらず私から逃げるのは上手いんだな。
そんな変な納得をしてロイはイーストシティ中心部にある図書館へと向かった。
「…もうどーでも良くなってきた…」
ぜってー見つける。
意気込んだものの、この広い町から何処にいるかの目星もない、たった一人を見つけるのは至難の業。
そうなると自然とやる気が削がれるのは普通だろう。
(別に、今日会わなきゃいけないってわけでもねーし…)
数百メートルほど歩いた所でもう諦め。
「…図書館でも行くかなぁ…」
くるりと向きを変えてエドは歩き出した。
図書館前。
「あ」
「あ」
偶然なのか必然なのか。
この場合はエドの行動を読んだロイからすれば必然、エドからすれば偶然というところか。
「っ見っけた!」
「全く、何処に居たんだね君は…」
互いが互いに思うところあって言った言葉は見事に噛み合っていない。
そこを自分が折れて、修正するのがいつもロイの役だ。
「ところで見つけた、ということは私を探してくれていたのか?」
「当たり前じゃねーか」
他に何があるんだ、とふんぞり返る金髪の子供。
ふんぞり返るほど自信気に言うのはいいが、それが逆に不思議で。
「しかし私は君に急ぎのことは何も頼んでは居ない筈だが…」
もしや中尉にでも頼まれたか?と少し焦って聞くと、エドははぁ?と言った顔をする。
「別に頼まれてなんかねーよ」
俺は私用で探してたんだっつの。
「は?」
「だから私用」
鋼のが私に私用。
報告書と査定以外に呼ばない限り進んで会いに来ようとしない鋼のが私に私用。
それは飛躍するようだが。
「…それは、私に会いに来てくれたと思っても?」
「…他に何がある」
心なしか顔が赤いのは気のせいではないだろう。
やばい。
今物凄く抱きしめたい。
我に返った時既に遅く。
「――って、オイっ!」
人目も気にせず、自分の胸位までしかない少年を、勢い良く引き寄せて胸の中に押し込めた。
「っばか!放せっ!!」
エドの真っ赤な顔と動きはロイに制される。
しばらく抵抗していたが、諦めたのか落ち着いて、ロイの服の端を少し掴む。
それはロイにも感じられて、くすりと笑うと。
「嬉しいよ」
「……言ってろ、ばか…」
今のは大佐が言ってくれたけど。
ここまできたら、俺の言葉でも言ってやってもいいかな、なんて思った自分が居たりして。
「…東部に来てさ、」
素直に、なってみるのもいいかな、なんて思ったりして。
「アンタに会うと、ホントに帰ってきたんだなって、気がしてさ」
だから、アンタを探してた。
小さい小さい声だったが、ロイにははっきり聞こえていた。
「…全く…」
これ以上私を喜ばせてどうするんだ?
先程よりも強く優しく抱きしめて。
エドの耳元に囁いた。
「今度は何処へ?」
「西、かな」
「そうか。では私は夜風となって君を見送ろうかな?」
「ま、したいようにすれば?」
東から漕ぎだした舟は やさしい夜風を受けて
西へ行く 遥かな時間を
たゆたう想いを乗せて
END.
04/09/14
某ロイエドソングを使ってのすれ違いをミニテーマに書いてみました☆(どこからつっ込んでいいやら)
あと今シリアスを書いているので、とにかく甘いのを書きたかったのです(笑)
何はともあれ無事サイト開設一周年を迎えられます!
これもひとえにサイトを訪れて下さっている皆様のおかげです!
本当にありがとうございます!!vv
ささやかな気持ちですが、この小説を少しでも喜んで頂けたら幸いですvv
これからも、当サイトを宜しくお願い致します!!
橘明
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