テレビからは既に新年へのカウントダウンが始まっている。
俺とロイは昨年同様、テレビの前でカウントダウンの終わりを待つ。
一年という歳月が早いのかは人それぞれだけど、充実しているとそれなりに早いと感じる。
ロイはどうだか分からないが、俺はどちらかというと早く感じた方だと思う。
でも決して充実した、とは言えない。
それでも楽しかったから俺にとっては早かったし、良い一年だったと思う。
(こんな風に、楽しいと感じるようになったのは何時からだろう、)
そんな風に思い出される一年がまた終わろうとして。
「明けたな、おめでとう」
「おめでと、」
そんな風に思い出すであろう一年がまた、始まる。
snow drop
「そういやさ、俺初詣行きたいんだけど」
「え?」
年越し蕎麦は年を越す前に食べるのか、それとも年を越してから食べるのか、そもそも年を越してから食べても年越し蕎麦と言うのかなとどいう小さな疑問を持ちながら食べている時に、蕎麦を食べていても変に格好のついているロイに俺は話を切り出した。
正直蕎麦を食べる時にそんなもの必要ないだろうとは思うが、そんな所に突っ込んでいたら毎日が面倒だ。
この際新年早々どうでもいい疑問は置いておき、返事を待つ。
「別に構わないが…去年は混んでいるから嫌だと言っていたのはエドだろう?」
「よく覚えてんな…」
確かに言ったかもしれない。
だが去年はそれで酷い目に遭ったのも事実。
尤も本当に酷い目に遭ったと言い切れないのも事実だが。
そんな去年のことを思い出して顔が赤くなりそうなのを何とか抑えるように言葉を続ける。
「そりゃ俺もわざわざ混んでる中に突入してきたくねェよ」
俺自身、正直混んでいる所は好きじゃない。
買い物に行く時も混む時間帯を避けて行くようにしている。
そもそも好き好んで人混みの中に行く奴なんていない。
俺もその一人だけど、今回は。
「でもアルがさ、来年は受験だしとか言って折角だから一回くらい一緒に行こうって」
そう、アルが尤もな言い分で提案してきたので俺も行こうかななんて気になったんだ。
おそらく俺を何かと出不精な俺を外へ連れ出す口実にいったんだろうけど、アルとだったらまぁいいかなんて思ったのも本当で。
ただ。
「ほう…アイツと、」
ちゃんとした理由を言ったところでこの人が良い顔をするとは思ってはいなかったけど。
案の定、俺を見る視線に棘が混じり出した。
こんな視線を投げ出した時のロイは何を言いだすか、むしろ何をするか分からない。
蕎麦の丼を持ったまま警戒していると、ふっと表情を緩め視線を逸らして。
「――てっきり、私を誘ってくれたのかと思ったんだが」
「え」
そう言われて気付いた。
そうか、俺は話を切り出した時に誰と行くとは言わなかったからロイは自分が誘われたんだと。
だから嫌な顔をしたのか。
少なからず一緒に行く奴がアルってこともあっただろうけど、大元の部分は。
自分じゃ、なかったから。
(……以外、っつーか…)
何か、不覚というか。
可愛いところがあるんだなぁとか、思ってしまって。
(…向こうに自覚がない分、こっちが照れるっつの、)
真っ赤な顔を見られたら言うまで追求されるから見せるわけにはいかない。
本日二度目の赤面を汁をすすって丼で隠してやり過ごしていると。
「そもそも受験て、実際は再来年…いや、年を越したから来年だろう?」
それが何故今年行く必要が?と投げかけてきた。
俺も実際まぁ確かに、と頷いて。
「けどOKしちまったし…今更断るのもさぁ、」
決して本意ではないことを醸し出しつつ、ふと時計に視線を流す。
と、時計は既に一時近くを指していた。
アルは一時に俺の家に迎えに来ると言っていた。
「っと、ヤベ、もう支度しねーと」
丁度蕎麦も食べ終わり、器を適当に水の中に浸けて、オイ、と俺を呼ぶ声を申し訳なく流し、俺は慌しく支度を始めようと二階へ駆け上がった。
コートを着て財布と携帯をポケットに突っ込み駆け下りると、階段下にはロイが待機していて。
ふと俺を見上げると。
「ん?そのコート、」
ロイが言っているのはももの真ん中程までの丈の真っ白のコート。
フードには同じく白のファーがついている。
「ああこれ?」
言ってなかったっけ?と腕を広げながら。
「一昨日父さんから届いたんだ。今年も帰れないからお詫びにって」
昨日は出掛けず着る必要もなかったから、実際袖を通すのは今日が初めてになる。
慌しく掴んで着た時には気付かなかったが、よくサイズが分かったよな、などと感心する。
「父のセンスはあまり感心は出来ないが、エドに関しては別格だな」
と軽く父さんを馬鹿にするような口調で語尾に笑いを含んだ後。
「可愛い」
急に真面目にそういう風に返されると、どう返したらいいか困るのに。
「〜〜っつーか、女の子が好むようなデザインだよなっ」
と、苦し紛れに自分で言った言葉でまたふと気付く。
「というか、確実に女物だろうな」
気付いた俺が言うより先にロイが言う。
だが似合っているよと続けて言われた俺のこの何とも言えない気持ちの矛先をどうすればいいのやら。
そうこうしているうちに時間は過ぎていくもので。
「って俺出掛けるんだって!」
叫びながら玄関へと走る俺の後ろをついてくるロイは。
「エドが迎えに行くのか?」
「いや、アルが来るっつってんだけど、家まで来ると少し反対方向だし」
靴を履きながら後ろに居るロイを振り仰ぎ。
「近くの交差点まで出て行こうと思っ、」
思って、と言い終わる前に俺は口を塞がれた。
不意を突かれた上、靴に手がいっていた俺は抵抗しようと手を伸ばした時には既に両頬を固定されていて。
「…っん、っ…ん、ん、…っ、」
開いた、いや開けさせられた口から俺の快楽を引き出していくような。
そんな、濃厚なキス。
「…っはぁっ、てめ、俺はこれからっ!」
出掛けるんだ、と力の入らない視線で抗うも。
「出掛ければいい。…行けるものなら、」
「っ!」
逆に有無を言わせぬ、してやったりの笑みと視線と言葉で丸め込まれ。
「っ、オイ、待っ…!」
抵抗を始めた頃には既に押し倒されて馬乗りになられていた。
寒いからとしていたマフラーは解かれて、下ろしていた長い髪が床に広がる。
着込んでいた白いコート当然、肌蹴られて。
「っ、冷てェ…っ」
「あぁ、済まない」
「っんの、」
セーターの中を這い回る手は、家の中に居たとは思えないほど冷たかった。
でも今はそれが暖かい肌を逆に煽って。
「っんで、そんな、冷てェんだよ…っ」
高まっていく自分を抑えようと言った言葉に。
「……すぐに、好くなる」
「〜っ!」
更に煽る言葉。
このままでは、完全に此処でヤられる。
そしたら初詣どころか、きっと明日も立てなくなる。
それは決して大袈裟な話ではなく。
(こいつはそういう奴だ!)
と、今更に悟った時。
ピンポンピンポン、と来客を告げるインターホンが鳴った。
こんな時間に来る予定のある人物は一人しか居ない。
「っアル!」
「……、」
思わず叫んで、助かったと力を弱めたのがいけなかった。
「オイ、いい加減離、せっ!?」
いきなり膝の後ろを掴まれて足を上げられるなんて、思うはずがない。
それも、幾ら厚い扉を隔てているとはいえ外にはアルが居るのに。
「なっ!?オイ!」
制止が遅れた俺を好き勝手やろうとする手が体を這っていく。
何とかしようと声を張り上げると。
「良いのか?外に聞こえるが…」
「っ、」
否が応でも黙らせるにはこれ以上ない効果的な言葉だ。
それで俺が抵抗を止めればコイツの思うツボ。
そう、思うツボだ。
「―――せるか…っ」
「ん?」
耳を近づけてきたロイに俺は。
「好き勝手させるかぁっ!!」
思いっきり叫んで。
思いっきり腹に一発、食らわしてやった。
「……出ない」
居ない筈はないのに、と呟いたアルフォンスは再び呼ぼうとインターホンに手をかけようとした時。
「っアル!」
「っエド、」
急にドアが開き、驚いて思わず身を後ろに引くアルフォンスに、縋るように身を乗り出してきたエドワード。
「どうしたのさ、鳴らしても出てこないし…」
直ぐに出てこなかったことと、エドワードの反応に対してどうしたのかと問うたアルフォンスの真意を読んだのか、エドワードはあははと苦い笑を返しながら。
「いや、まぁ、気にすんな…」
というか気にしないでくれ、と小さく付け加えてちらりと後ろに視線を流せば、やあと爽やかな笑顔を向ける人物が顔を出す。
「……こんばんは、明けましておめでとうございます」
「おめでとう」
アルフォンスの間は新年早々嫌な奴の嫌な顔を見たという無言の言葉だとロイは悟り、更に満面の笑みで年始の挨拶を交わす。
当然アルフォンスもまた、それがロイの嫌がらせだと気付いている。
エドワードも全て悟る、とまではいかないがこの空気がどういうものか程度は分かる。
「えーと、なぁ、アル、そろそろ」
その空気をどうにかしようと、切り出したのが不味かった。
「そうだね、行こうか」
「待ちなさい二人とも」
「何でしょうか?あ、行って来ますね?遅くはなりませんからご心配なく」
「いや私も行こう。子供二人では危ないからな」
「…」
「いえいえ、大丈夫ですよ、エドも僕もしっかりしていますから」
「そういう問題ではないのだがなぁ」
「……」
更に耐え難い雰囲気が深まり、この際逃げてしまいたいとすら思った。
(これが新年の幕開けって…)
きっと、来年の年始はこんな嫌なことがあったっけと思い出すに違いない。
果たしてこんな幕開けが良い年になるのやら。
果たして今年も楽しい一年になるのか。
とりあえず、それを願ってこよう。
END.
06/01/03
明けましておめでとうございます…!vv
昨年は気ままに更新して(爆)おそらく今年もそんな状態が続くかと思いますが(爆)
昨年以上に相手して頂けたら幸いです…!
で、幸先の良いスタートを切りたかったのですが何とも言えぬ文章で申し訳ない…!
何はともあれ、皆さんにとって良い年になりますよう!!vv
ブラウザでお戻り下さい。