「なーんか拍子抜け…」
エドワードは溜息と共に吐き出して、自室のベッドに寝転んだ。
同時に二つ折りの携帯電話を開く。
ディスプレイは普段の待ち受けのまま。
新着メールも着信もない。
(別に、期待してたわけじゃねーけど…)
それでもアイツのことだから、何日か前からしつこく言ってくると思っていた。
しつこく誘われると思ってた。
それに仕方なく頷く自分が居ると、思ってたのに。
「今日はイブだっつーの…」
そんなクリスマス・イブも何も連絡もないまま、あと三十分で終わる。
はぁ、とまた一つ息を吐いて携帯をするりと手の平からベッドに滑り落とした時。
「っわ、」
メールの受信を知らせるメロディが鳴り響いた。
holy night, under a starlit sky.
『外を見ろ』
本文はなく、タイトルにそれだけ入れられていたメールを見ると、エドワードは飛び起きて窓に飛びつき、勢いよく窓を開け放った。
玄関先は暗かったが、誰が立っているか直ぐに分かった。
「っ何、やってんだよ!」
思わず叫んだエドワードの声に、口に人差し指を当てて声を抑えるよう示すと、今度はその指で下を指して。
「外、出れるか?」
少し抑えた声で、エドワードを促した。
白い息がはっと広がる。
「ったく、俺がすぐメール見なかったらどうするつもりだったんだよ…」
「その時は気付いてくれるまで待っていたんじゃないか?流石にこんな時間に呼び鈴を鳴らすのも非常識だからな」
エドワードはロイに促された後、急いで窓を閉めてジャケットを羽織って外に出た。
そして行き先も告げられぬまま、ロイについていく形で、二人は暗い夜道を歩いていた。
「まぁ、すぐに顔を出すと確信はあったんだが」
「は?」
「今日一日、いつ連絡があるのか気にしてただろう?」
「っ!何で知って…っ!……あ、」
今更口をつぐんでも遅いことに気付いたところで、ロイの自分を見る、してやったりという笑みを止めることは出来ない。
つまりは初めからこうなることを確信していた上で、連絡を取らなかったというわけだ。
振り回された自分を思い返すと、恥ずかしくて相手の顔が見れない。
本当にいつも思うが、性質が悪い。
「〜〜けど、それだけじゃねェだろ?」
分が悪そうに口を尖らせて、エドワードはロイに問うた。
「アンタは性質が悪いけど、そんなことの為だけに連絡寄越さなかったわけじゃないだろ」
その言葉に、ロイは一瞬目を見開いて。
「なんだ、勉強以外のことには疎いと思っていたのに」
「その辺は推理と一緒。疎くても頭の回転は速いから」
軽く自慢で返すと、くくっと肩を揺らして押さえて笑った。
「何だよ」
「いや、らしいなと思って」
「はぁ?」
怪訝な表情を向けてくるエドワードを、ロイは優しく見詰め返した。
恋愛面に関しては誰よりも疎いくせに、それでも強気の姿勢は崩さない。
堂々とした様は、いつ見ても惚れ直す。
そんな台詞を漏らそうものならば、照れた顔で大声が飛んでくるのは分かっているので心の中で留めておくが。
「ああ、此処だ」
「え」
着いたと促したところは、近所の公園だった。
何処に連れて行かれるのかと思ってはいたが、こんな近く、それもこの寒い夜中に公園だとは思わなかった。
確かに今の時間開いている店の方が珍しいと思って、それはないとは思っていたが。
「何で、公園?」
「まぁたまには良いだろう?こういうのも」
そう言ってロイは近くのベンチに座り、隣を勧めた。
何故かその一言に妙な納得をしてしまい、とりあえず隣に腰を下ろす。
するとロイは持っていた紙袋の中から、ボトルとグラスを取り出した。
「…何持ってんだとか気になってたけど…わざわざ…」
それならアンタん家でも良いのに、と漏らした声に。
「それは私の自制心を試そうとしているのか?」
「何で?」
「……いや、いい」
やっぱり分からないか、と内心呟いて自嘲染みた溜息を漏らした。
幸いエドワードはそれに気付いてはいなかった。
気付かれていたらまた言い合いが始まっていただろう。
聖なる夜に喧嘩では情緒がない。
「とりあえず、乾杯するか」
エドワードにグラスを渡し、手馴れた手付きで中身を注ぐ。
「アンタ一応教師だろ?いーのかよ、酒勧めて」
「アルコールのないシャンパンだ」
「あ、そ」
自分のグラスにも注ぎ、ボトルを置いてグラスを向ける。
「では、乾杯」
「……かんぱい」
ロイが先に飲むのを見届けてから、エドワードも液体を口に含んだ。
寒空の中、冷たいものを飲むのもどうかと思ったが、それなりに美味しいと思った。
それにしても、とエドワードがちらりとロイを見た。
ロイはふと合った視線を読み取って。
「何だ?君に乾杯、とでも言って欲しかったのか?」
「そんなこと言った日にはテメェと二度と口利かねェ」
「言うと思ったよ」
ははっと笑って、再びグラスに口を付ける。
「……何でさ、たまにはいいとか思ったんだよ」
「え?」
「いや、アンタって結構用意周到だから、もっと何か…煌びやかな感じのプラン練るイメージあったんだけど」
「…まぁ、確かに…」
確かにそんなプランを考えてはいた。
だがエドワードがそういう雰囲気が苦手ということもあったし、かと言って普通と言えるような過ごし方は知らない。
「でも、エドワードに関しては――」
エドワードに関して言えば、自身の持つ経験も何の役にも立たない。
それでも、必死に試行錯誤することが今はとても充実しているように思える。
プランもイメージも関係なく、一緒に居られることが何よりのことだとも。
「俺に関しては、何だよ?」
「…いや、」
これは言葉にすることではない。
言葉にして出してしまっては、薄れてしまう。
自身に留めて、噛み締めることで一番を感じていられるのだ。
「――あ、そろそろだな」
「何が?」
ロイが腕時計を見たことで、エドワードも携帯を取り出して時間を見る。
時刻はもう直ぐ日付を越える。
二十四日から二十五日へと変わろうとしている。
「…一日一緒に過ごすことよりも、」
この瞬間を共に迎えたかった。
そう伝えようとした時。
「あ、十二時だ」
エドワードの声が先になって。
「そういや忘れてた。メリークリスマス」
軽く発せられた聖なる言葉。
エドワードにとってはクリスマスも、正月も誕生日もきっと、こんな風に軽くいえてしまうものなのだろう。
もしかしたらそれが、エドワードらしい過ごし方なのかもしれない。
だったらそれに。
「メリー、クリスマス」
便乗するしかないだろう?
そして。
聖なる夜の、星空の下。
二つのグラスに映し出された星空を、共に飲み干した。
「手でも繋いで帰ろうか」
「俺手袋あるし」
「あぁ、そうか…」
まぁ。
好き勝手暴走させておくのも、考えものなのだろうが。
06/12/25
ギリギリでクリスマス話…!
今年はエド子でお届けさせて頂きます!
何かもう自分の引き出しがみすぼらしい感じ丸見えですが許してください(涙)
メリクリー!!